2026年8月30日
夕方だけ開く窓
夕方になると、いつも閉じているはずの窓にだけ明かりがともっていました。
坂の途中に、夕方だけ開く窓がありました。
昼間に通ると、そこはただの古い壁です。鉢植えの葉が少し伸びすぎていて、雨どいの影が細く落ちている。それだけの場所でした。
けれど日が沈みきる少し前になると、窓の内側にやわらかい明かりがともります。誰かがいる気配はあるのに、声も足音も聞こえません。
合図ではない明かり
その明かりは、誰かを呼んでいるわけではなさそうでした。
ただ、今日という日がもうすぐ終わることを、通りかかった人にだけ小さく知らせているようでした。
何度か前を通っているうちに、そこが実際にある場所なのか、自分が勝手に覚えてしまった景色なのか、少しずつわからなくなっていきました。